◇第四章◇

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 朝食後、未緒は特別する事もなかったため、自分専用の車に乗り昨日よりも早めに学校へと向かうことにした。  一人広々とした後部席でぼんやりと通り過ぎていく景色に目をやる未緒。 今日の天気は雲一つない晴天が広がり、暖かな日差しが地上に降り注がれ、学校に向かう学生や出勤途中など、道行く人々の足取りはいつもよりとても軽く見られた。  そんなことを考えながら車に揺られていると気付けば学校の校門の前までやってきていた。  昨日と何の変わりのない校内を歩き、慣れない挨拶を交わしながら教室に向かっていると、前方から朝練で未緒より早く家を出ていた遥斗がやってくるのが目に入った。 「よお、未緒。今日は早いじゃねぇか! ……ん?」 遥斗はいつものような笑みを浮かべて近くまで寄ってくると、急に首を傾げて未緒の顔を覗くように見てきた。 「な、なに…?」 「ん~…いや、なんか今日は機嫌良さそうだなあって思ってよ」 「はあ? ……別に、いつもと変わらないけど?」  未緒は首を傾げながらどの辺が違うのかを確認する。 「う~ん、何て言うか、いつもより表情が柔らかい? …まあ、とにかく機嫌良さそうなんだよ!」 「意味分からん」 「うわっ、冷てえ反応だなあ」  特別面白い話をしているわけでもないのに、なぜか遥斗の表情は明るく、昨日のような遥斗はそこにはいなかった。  教室の前で何気ない会話をしているとふと、後ろから二人を呼ぶ声が飛んできた。 「遥斗、未緒ちゃん!」 「ん? お、なんだ、拓人じゃねえか」  振り返るとそこには鞄を肩から下げ、こちらに手を振る拓人の姿があった。 「おはよう! 遥斗、未緒ちゃん」 「お、おはよう」  未緒は慣れない口振りで笑顔の拓人に挨拶を交わす。
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