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「…………。」
彼はさ迷っていた。
何もない、地すら無いただ黒しかない世界を。
「………………!」
向こうから彼と同じように宙をさ迷っている人影を彼は見た。
「…………。」
彼は人影に近づく。
体格からして男性のようだ。
雪のように白く、足まである長い髪が男の顔を覆っていて顔が確認出来ない。
「なにゆえ此処に来た?」
男は低く、辺りに響くような声で彼に問う。
「気がついたら此処に居た。それよりアンタは誰だよ?」
「愚問だな、答える必要は無い」
男が彼を見下すように答えると、彼の頭に血がのぼった。
「何が愚問だ! あの質問、お前は誰だって言ったのアンタだろ!? そんなの、アンタのも愚問だろうが!!」
「ほぅ? 我の問いが愚問か……。ならば貴公に問う、貴公のその異常なまでの身体の強靭さは何だ?」
「なっ!?」
彼は答えられなかった。
男は「フッ」と鼻で笑う。
「やはり答えは無いか。答えられないなら早々に立ち去れ」
男は彼に背を向け、ゆっくりと歩き出す。
「ちょっ!?待てよ!」
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