Prologue

5/8

13人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
「…………。」 彼はさ迷っていた。 何もない、地すら無いただ黒しかない世界を。 「………………!」 向こうから彼と同じように宙をさ迷っている人影を彼は見た。 「…………。」 彼は人影に近づく。 体格からして男性のようだ。 雪のように白く、足まである長い髪が男の顔を覆っていて顔が確認出来ない。 「なにゆえ此処に来た?」 男は低く、辺りに響くような声で彼に問う。 「気がついたら此処に居た。それよりアンタは誰だよ?」 「愚問だな、答える必要は無い」 男が彼を見下すように答えると、彼の頭に血がのぼった。 「何が愚問だ! あの質問、お前は誰だって言ったのアンタだろ!? そんなの、アンタのも愚問だろうが!!」 「ほぅ? 我の問いが愚問か……。ならば貴公に問う、貴公のその異常なまでの身体の強靭さは何だ?」 「なっ!?」 彼は答えられなかった。 男は「フッ」と鼻で笑う。 「やはり答えは無いか。答えられないなら早々に立ち去れ」 男は彼に背を向け、ゆっくりと歩き出す。 「ちょっ!?待てよ!」
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加