Prologue

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「なにゆえ待たねばならん?自身が何なのかも分からんような者に」 俺は歩みを止め、背を向けたまま彼に言う。 男の言葉に彼の表情が歪む。 「だったら俺は何なんだよ!ちっとは教えろ!」 一瞬、この場に沈黙がたたずむ。 「貴公とて既に感じているハズだ。『あの日』以来、自分の身体に異変が起きた事を」 「!? 何でそれを……」 「あれ以来、力が妙に着いたり、目が良くなったり、脚が速くなったり、傷が早く治ったり……」 「…………」 男の皮肉にも聞こえてくる声の前に彼は黙り込む。 「そして時折、自分の意思とは別に身体が動くような錯覚を起こす。」 男は身体を彼に向け、髪をかきわける。 彼は目を大きく開き、驚きをあらわにする。 「まるで、自分の身体ではないかのように」
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