雷跡2 帰れぬ道へ

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各艦から5機ずつ飛び立った15機の機体は、2つに分かれて飛んでった。 「こちらスラッガー1、只今目標の不明機の編隊を確認した。」 「こちら横浜、了解した。それで機種は?」 「私にはわからないがスラッガー8の唐沢の言うことによるとダグラスSBD・ドーントレスとFー4コルセアです。」 「了解、距離を保ちつつ待機せよ。」 「了解。」 手順は練習と同じだったが、身震いを起こした。 このスラッガー隊の隊長である山城響子中佐には、初めての身震いだったがそれが恐怖によるものなのか、武者震いなのかは判らなかった。 ふと急に部下達に命令を伝える事を忘れていたことを思い出した。 中学生の頃から学級委員長で成績オール5だった山城には部下達えの命令忘れなんてしたことがなかったが下を悠々と飛んでいる太平洋戦争時代のプロペラ機に目を奪われていた。 気づかれないように、1000メートルも上の上空を飛んでいるので肉眼ではあまりハッキリとは見えないが、それでも後退角が無い主翼やデカい機首などは判る。 余談ではあるが何故杉本が機種を判別できたかというと彼の乗っているのはB型の偵察機だからである。 「全機に告ぐ、編隊をこのまま維持し速度を不明機と同じ260Km/hに落とし、このままの方角及び高度を維持せよ。」 ただ単調に言った。 ふと、レーダーに新たな機影が映った。 敵味方識別装置ではハッキリと味方を示していた。 「フン、佐賀の部隊か」 何気なく口からその言葉がもれた。 佐賀真優少佐。 彼女とは防大からの同期で二人とも海自始まって以来の凄腕女性パイロットと言われ、模擬演習の時には一緒に組んだ時には全機撃墜。 米軍とではFー15JでFー22を撃墜。 互いに戦った時には互いのチームの機は全機撃墜。二人は最後に同時にトリガーを引くという結果だった。 山城率いるスラッガー隊と佐賀率いるシーバー隊は合流し速度を260Km/hにしたまま不明機を追った。
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