雷跡2 帰れぬ道へ

13/27
前へ
/428ページ
次へ
少しずつだが空に浮いた機体が加速していった。 そして、数分後には零戦とは比べて物にならない位の速度で8機ほどの編隊を組みながら雲の中へと飛んで行った。 数分後… 「敵戦爆連合発見。方位230。距離15000。数、30。ゲリラ式に展開しています。」 「先ほど飛び立った編隊か?」 好奇心からか、とっさに南雲が聞いた。 「いえ、米海軍の攻撃機です。」 「対空戦闘用意。」 兎にも角にも南雲は判り次第命令を下した。 「対空戦闘用意。」 復唱の声か聞こえ、ラッパの音が艦内に響き渡った。 「右舷後方魚雷接近、数2」 早くも敵からの攻撃が来た。 「面舵一杯。」 慌てて艦長が言った。 「面舵一杯。」 ゆっくりと艦が傾き、面舵を切った。 「艦後方50、魚雷通過します。」 2本の雷跡が、艦の後方を通り過ぎて、やがて消えた。 南雲はひとまず安心した。いや、艦にいた全員が一安心した。だが、敵は尚も攻撃した。それを日本軍だと思い込んで… 「不明艦上空急降下。」 「なに!」 艦橋内は混乱した。 「あの艦は敵ではないのか?」 誰もがそう思った。
/428ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1944人が本棚に入れています
本棚に追加