雷跡2 帰れぬ道へ

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気がつくと関本は立っていた。 「お父さんお帰りー」 声のする方向を見たら、まだ3つぐらいの男の子が走って来た。 「ゆ、裕太?」 関本は驚きを隠せなかった。 急いで当たりを見回した。 ここは、玄関? しかも、俺の家 帰って来たのか? 「あら、あなた今日はずいぶんと早いじゃない」 今度は廊下の奥からのれんをくぐって一人の女性が向かって来た。 「な、夏樹!」 「どうしたの?そんなに驚いたりして、」 本当に帰って来たんだ! 関本は嬉しさでその場に立ちすくんだ。 「あら、疲れているみたいわね、早く着替えてお風呂にでも入ったらどう?」 「分かった。」 そういって関本は自分の部屋に行くため階段を登って行った。 だが、最後の一段を踏み外した。 「ゴロゴロゴロ、ドサッ」 一気に14段を転げ落ちた。 「あなた、大丈夫?」 「ああ、大丈夫」 「そんなに無理して歩いて登ろうとするからよ」 「???」 関本は夏樹の言っていることがサッパリ分からずにいた。 「だから、飛んでいくのよ」 「飛ぶ?」 見ると裕太や夏樹、そして自分にも背中に白い羽が付いていた。 それに階段の上から落ちてきたのにどこも痛くもない。 どうなっているんだ? 「もう生きているときみたいに苦労しなくて良いんだからね。」 生きているときみたいに! そんな、ここは天国か 俺は死んだのか? 「あなた、大丈夫? 顔色悪いわよ、ちょっと、しっかりして、あなた。」 そう言いながら夏樹は関本の体を揺すってきた。 「や、止めろ。お、俺に触るな!近寄るな!」 関本は必死にもがいた。 「どうしたの?あなた大丈夫?ねえ、大丈夫?」 「ぅワアアアアアアァァ」 いつも、どんな練習の時も冷静だった関本が腹の奥底から悲鳴を上げた。 「大丈夫ですか?しっかりして下さい。」 「止めろ~だっだれか助けてくれー」 「大丈夫ですよ司令、落ちて下さい。」 「ハッ!」 漠然とした表情で関本は起きた。 ウッ・・・ 痛い・・・ 待てよ・・ 痛いとゆうことは俺は生きているのか? 「大丈夫ですか?」 「あ、ああ大丈夫だ」 見ると、関本は潜望鏡から3メーター位離れていた所に横たわっていた。 そして若い隊員が横たわっている自分をのぞき込んでいた。 痛い所を見てみると右肘に痣があった。 どうやら転げ落ちた時に打ったらしい。 「艦長、艦隊の状況は、損傷のある艦は有るか?」
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