転校

2/8
前へ
/242ページ
次へ
「飛鳥(アスカ)、早くっ! 姉ちゃん遅刻しちゃうから!」     「お姉ちゃん、待ってよー」     玄関先で年の離れた妹の飛鳥に向けて叫ぶあたしの名前は清水透(シミズ トオル)。   透なんて名前だけど、れっきとした高校2年の女子だ。     「気を付けて行ってくるんだよ」     「うんっ! いってきまーすっ。 お父さんも早く出ないと会社に遅刻するよ!!」     「遅刻するよっ。 いってきまーす!」     あたしの真似をする飛鳥と一緒に、エプロン姿のお父さんに笑顔を向けて家を飛び出した。   あたしの家は、お父さんと妹と3人暮らし。   お母さんは元々身体があまり丈夫じゃない人だった。   周囲の反対を押し切って飛鳥を産んで、2ヵ月ほど前に亡くなった。   お母さんの静養の為に、元いたこの街を離れたのは中2の時。   お母さんの49日の法要が終わり、3年ぶりにこの街に戻ってきたのだ。    
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2591人が本棚に入れています
本棚に追加