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「ドロワさん……」
アルトはその頬から手を引いた。
そして立ち上がり、踵を返して、部屋の出口へと向かう。
「……ごめんなさい」
横切った時、セレはアルトにそう囁いた。
だがアルトは、その言葉に何も返す事が出来ない。
そのまま、アルトは家を出る。
そしてただ雨の中を歩き始めた。
(なんで……)
アルトは立ち止まり、雨空を仰いだ。
(なんで、謝ったんですか)
その答えはもう得られない。
だが、それを問わずにはいられなかった。
教えて欲しい、応えて欲しい。
しかし、答えは永久に分からない。
(こんなのは……)
アルトはその場に膝をつき、そして手も置かずに頭から倒れた。
(こんなのは認めない……)
そう、これは夢だ。
きっと悪い夢だ。
アルトはそのまま目を瞑り、雨に打たれながら意識を閉ざした。
この悪夢を呪いながら。
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