ロシアンティーを頂戴

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ラトビアが落としたスプーンをとって、僕もジャムを舐めてみる。 甘酸っぱい。 何となく、ラトビアみたい。 何となくだけどね。 「ラトビアの味がする。」 「え?」 あ、口にでちゃった。 またラトビアがびっくりしてる。 説明なんかしないけどね。 できないし。 「ねぇ、ラトビア?」 「は、はい?」 びくびくと返事をする。 お茶くらいゆっくりのめばいいのに。 ほら、あんなにお茶の表面が揺れてる。 こぼれちゃうよ。 ラトビアをこれ以上怖がらせないように(お茶もこぼれちゃうし)、できるだけ優しく微笑んで。 「また、一緒にお茶飲もうね。絶対だよ。」 約束。 暖かい、ロシアンティーを。 また君と飲みたい。 僕とおんなじ色の瞳の、おんなじ色の髪の、 『まるで、昔のぼくみたいな』 震えるラズベリーの唇に。 約束の口づけを。 End.
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