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僕の前を歩いている、
大きな大きな国。
力も強くて、無邪気で、冷徹。
ろしあさん。
長い長いマフラーが、後ろを歩く僕の周りをゆらゆらしている。
それを踏まないように、気を取られていたら、いきなり止まったロシアさんにぶつかってしまった。
「うわっぷ!」
「ちゃんと前みてなよ、ラトビア。」
「すっすみませんっ!!」
怖い。
こわい恐いコワイ。
僕なんか、きっとひとひねり。
僕はきっと今みたいに、ボロボロ泣きながら死んじゃうんだ。
みっともないなぁ。
でもね、ろしあさんだって、簡単に殺せちゃう方法がある。
長い長いマフラー。
いつも巻いてるあのマフラーを、ぎゅぅって、一生懸命引っ張れば、多分僕にだって殺せちゃう。
ろしあさんは、くびがきゅうってなって、いつもと違う弱い声で、僕の名前をよぶんだろうな。
そして、見たことないくらい白い顔で、僕の足元に倒れちゃうんだ。
その時はじめて僕は、ろしあさんを見下ろすんだろうな。
その時僕は、笑ってるのかな。
泣いてるのかな。
怒ってるかも。
どれにしたって、僕はその時自由になるんだ。
「ラトビア?」
目の前に、自由へのスイッチがある。
手にだってとれる。
「ラトビア、どうしたの?僕のマフラー、どうかした?」
あとは、ひっぱるだけ。
「ラトビア?」
「ろしあさん。」
「どうしたの?」
その勇気がでない。
End.
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