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「ねぇラトビア。」
びくっ。
小さくて骨張った肩が反応する。
ちゃんと僕の声が聞こえてるかどうか、わかりやすくて便利だよね。
ちょっと怯えすぎてていらつくときもあるけど。
「ねぇラトビア。」
「はいっ、な、なんでしょうか。」
再度呼びかけると、ちゃんと返事をした。
相変わらず震えてるなぁ。
日本君ちの地震みたい。
「お茶、飲みたいな。」
にっこりと、優しく微笑んだつもりだったのに、ラトビアはさっきより震えて、泣きながら謝っている。
あんなに震えてたら、お茶こぼすんじゃないかな。
かわいいけど。
「…持ってきました。」
カタカタと陶器のカップをゆらしながら、ラトビアがお茶を持ってきた。
「あれ?ひとつだけ?」
そう尋ねると、ラトビアは心底不思議そうな顔をした。
その意外そうな顔、好きだなぁ。
「…えと…。」
まだ理解できないんだ。
鈍いなあ。
リトアニアやエストニアとは大違い。
「ラトビアの分、は?」
微笑んでみると、まだ半分理解できないような、わかったような顔で、はいっ!と戻っていった。
しばらくして、少し小さい自分用のカップを持って帰ってきた。
そして、向かいに座らせる。
「ラトビアは、なんのジャムが好き?」
また問い掛けに答えずに、目を丸くさせている。
ねぇ、とむくれると、また泣きそうになる。
もう、なんなの。
怒ってないってば。
「えと…ラズベリーが…。」
「ラズベリー?わかった。じゃあ僕もそれにする!」
ラトビアは、更に目を丸くした。
なあに?僕が君と一緒じゃ変?
スプーンで、ひとつすくって、クルクルと紅茶にとかす。
いいにおい。
ラトビアも同じようにしてクルクルとしている。
そして、癖なのか、もうひとつジャムをすくって舐めた。
「…おいしい?」
「あっ!」
はっと気がついたようにまた涙目になって、スプーンを落とした。
うーん。僕ってそんなに恐い?
へこんじゃうなぁ。
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