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「おい、何で抱っこするんだよ!?」
俺の予感した通りこいつは俺の身体を抱き寄せてそのまま抱っこしてもうスピードで走り出した。
雷虎の長身のお陰ですぐに前で走っていたみんなのところまで追いつけられてそのまま抜かして夕食会場へと一直線で向かった。
「…遅刻しない。」
そりゃあ遅刻しないし楽だから嬉しいけど、これは流石に恥ずかし過ぎじゃん。
「雷鬼ヒカルを下ろせよ!」
雷虎の肩越しから後ろを見ると啓太が雷虎のスピードに追い付こうと頑張って走りながら怒鳴っていた。
勿論その後ろは歩多佳達が苦笑いをしながら走っていた。
どうせなら俺もそこら辺の位置で走っていたかった…。
「…ヒカル落ちちゃうから掴まって?」
雷鬼は啓太を鼻で笑い、わざとヒカルの身体が左右に揺れるように走り、不安定感を醸し出してヒカルに抱き着いてもらおうと考えた。
「危ねっ!」
案の定ヒカルはバランスを崩して危うく腕の中から落ちそうになりながらも、反射神経のよさにより落下はまのがれた。
そして、雷鬼のお望み通りヒカルは無意識に雷鬼の腕を掴み、そのまま抱き着いた。
「ヒカルいい子。」
自分の思い通りの展開になり、満面笑みを浮かべながら片腕でヒカルを落とさないように支え、いつもとは逆に主人の頭を撫でた。
「…なんかお前に撫でられるのは恥ずかしいな。」
いつも頭を撫でている奴に逆に撫でられるとむず痒い気持ちだな。
でも撫でられるのは嫌いじゃないから、いいっか。
ヒカルは気持ちよさそうに目を細めた。
「…。」
雷鬼はヒカルの表情を見て、主人を猫耳と首輪を付けて飼いたいと本気で思った瞬間だった。
「どうした?」
ふと俺の頭を撫でていた雷虎の手が止まったので、後ろを振り向くと難しい顔をしていた雷虎の視線とぶつかった。
「ん…なんでも、ない。俺頑張る。」
俺の問い掛けにいつもの表情に戻った雷虎はまた俺の頭を撫で脈拍のない答えと共に雷虎は風を斬るように今までにないくらいにスピードをガンガンとあげた。
ヒカルに早くケーキをあげてご褒美を貰おうと、後ろを走ってる啓太達を気にもせず更にスピードをあげた。
「雷虎みんな着いてきてないぞ!」
突然雷虎がスピードをあげたせいで啓太達との距離が開いていってしまった。
「っおい!周防待て!」
啓太の声など聞かず雷鬼はスピードを緩めず会場へと一直線に向かって行ってしまった。
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