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私は大樹から目を背ける事なく、じっと見つめて
そう、言った。
大樹も私から目を背けはしない。
大樹『……俺じゃ、梨乃を救う事、できないの?』
梨乃『…ううん、少し救われたよ…』
大樹『……もう、俺じゃあ無理?』
私は大樹の問いに、
静かに頷く。
梨乃『……大樹…、ううん…野島君。』
大樹『………』
梨乃『―――今までありがとう。』
チャイムが鳴り、
廊下にはいつのまにか
人がザワザワと登校してきていた。
私は大樹を残し、空き教室を後にした。
ありがとう、大樹。
ひと時でも、私の心を満たしてくれてありがとう。
でもね大樹、
私達は結局別れなくてはならない運命なんだよ。
私は、親の決めた相手と結婚するのだから。
あなたも知っていたでしょう?
もう、16歳になってしまうんだよ。
近いうちに婚約候補の方とも会うんだよ。
そして、好きでもなく
なにも知らぬ相手と、結ばれる。心満たされることなどなく――…
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