・君の温もり

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梨乃『……山西くん?』 「………え?」 梨乃『え?じゃなくて、廊下をボケッと見てないで、早くプログラム閉じてよ』 「あぁ…うん、悪い。」 そうだった…。 ボケッとしている場合じゃない。 議長と副議長は クラス全員分の文化祭のプログラム表(しおり)をホッチキスで止めて、皆に配らなくてはいけないのだ。 副議長である岡本は、手を止める事なく、ホッチキスでしおりをとめていく。 放課後の教室、静かだ。 廊下に残る者もいない。 他のクラスもだいたい文化祭準備が終わったから放課後残ることもない。 俺もホッチキスとめに集中しようとした。 でも、集中などできない。 俺は、静かに息を吐き出した。 「………なぁ…」 梨乃『…………』 「……べつに、泣くの我慢しなくていいよ…」 気付いてないとでも思ったか、岡本。 "早くプログラム表とじて"だなんて、 顔を俯かせながら言われても、プログラム表とじに集中できるわけがない。 岡本はボロボロと涙を流した。 静かな教室に向かい合わせで座る2人。 その俺の耳に入るのは、岡本の、鼻を啜り、静かに泣く声だった。 「……岡本…」 岡本はきっと、 自分の自業自得であろうと いきなり大樹の存在も 友達である沖田葵の存在も失った事が あまりにも辛かったのだろう。 きっと岡本は今、こう思っている。  "私は"  "一人ぼっちなんだ" ・
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