第4章・操られるがままに

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千代『…美和子さん、今日のところはお引きとり下さい…』 美和子『千代さんっ!考えて下さい、お願いよ!あの子もいなくなった今、婿なんて無理だし、本当に後継ぎがっ――』 美和子は千代に詰め寄る。眉間にシワを寄せて 必死に何かを頼み込む。 しかし千代の 頷く姿は見られない。 千代『自分の…自分の子一人大事に育てずほったらかしていた様な人に”後継ぎいないから息子さんを下さい”って言われて”はいどうぞ”なんて言う親がどこにいますか!!』 千代は美和子を鋭く睨みつけると、そう怒鳴る。 美和子『……』 千代『…美和子さん、貴女は最低な大人だわ。………それに、何て可哀相なことだったか…』 美和子『…何が可哀相?』 千代『貴女の子供だった、美羽ちゃんよ…。』 美和子『………』 身勝手な、親の都合で 身勝手な、大人の我が儘で 身勝手な、大人のせいで 親から、愛を与えられなかった 美羽ちゃんが―……。 とても、イイ子だった 美羽ちゃんが。 私の息子が、美羽ちゃんに惹かれていたことなんて、親の私はとっくに気付いていて だから、私よりも 陸が1番、美羽ちゃんの死を悲しんでいるのは 知っている。 美羽ちゃんは、とてもイイ子だった。 けれどやはり、社会や大人の都合というものは そこらの情が勝てるものではなかった。 陸、貴方には 自ら愛した相手と結ばれてほしいと思っていたけれど ごめんなさい… 私も…山西千代も、 身勝手な大人の一人です。
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