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千代『…美和子さん、今日のところはお引きとり下さい…』
美和子『千代さんっ!考えて下さい、お願いよ!あの子もいなくなった今、婿なんて無理だし、本当に後継ぎがっ――』
美和子は千代に詰め寄る。眉間にシワを寄せて
必死に何かを頼み込む。
しかし千代の
頷く姿は見られない。
千代『自分の…自分の子一人大事に育てずほったらかしていた様な人に”後継ぎいないから息子さんを下さい”って言われて”はいどうぞ”なんて言う親がどこにいますか!!』
千代は美和子を鋭く睨みつけると、そう怒鳴る。
美和子『……』
千代『…美和子さん、貴女は最低な大人だわ。………それに、何て可哀相なことだったか…』
美和子『…何が可哀相?』
千代『貴女の子供だった、美羽ちゃんよ…。』
美和子『………』
身勝手な、親の都合で
身勝手な、大人の我が儘で
身勝手な、大人のせいで
親から、愛を与えられなかった
美羽ちゃんが―……。
とても、イイ子だった
美羽ちゃんが。
私の息子が、美羽ちゃんに惹かれていたことなんて、親の私はとっくに気付いていて
だから、私よりも
陸が1番、美羽ちゃんの死を悲しんでいるのは
知っている。
美羽ちゃんは、とてもイイ子だった。
けれどやはり、社会や大人の都合というものは
そこらの情が勝てるものではなかった。
陸、貴方には
自ら愛した相手と結ばれてほしいと思っていたけれど
ごめんなさい…
私も…山西千代も、
身勝手な大人の一人です。
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