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リビングのドアを開けて、そこにいたのは
栗色の髪をキレイに下の方でおだんごにまとめ、ピシッとしたスーツを着込んだ中年の女性。
軽く微笑む目元は、美羽を連想させる。
紛れも無く、俺が小さい頃よく会った事のある
…―美羽の、母親だった。
千代『何突っ立ってるの。早く中入ったら?』
「…あ…あぁ、うん。」
お袋にそう言われた俺は、とりあえず美羽のお母さん…美和子おばさんの座っている向かいのソファーに腰掛けた。
「………」
美和子『………』
しばらくの間、沈黙が流れた。お袋は美和子おばさんと俺の座っているソファーの間にあるソファーに座り、無言で俺を見つめる。
そして、
お袋が口を開いた。
千代『…陸、帰ってきてゆっくりしたいだろう時に悪いけど、美和子さんから大事な話があるの』
「あぁ、別に大丈夫だよ」
俺が答えると、今度は向かいの美和子おばさんが話始めた。
美和子『……本当に久しぶりね、陸くん。元気にしてたかしら?』
「えぇ、問題ないです。」
美和子『そう。あ、高校、神奈川の方に行ってるみたいだけど…学力とか、やっぱ高いの?』
「……まぁまぁ、かと…」
美和子『一人暮らしなんでしょう?大変でしょ、まだ高校男児の貴方が一人で自分の事なにもかもこなすなんて。』
「えぇ、想像してたより大変で…。……あの…それより」
美和子『……何かしら?』
「………そろそろ、建前は終わりにして本題に入っても良いかと。」
俺のその言葉に、美和子おばさんは真剣な顔になり、”そうね”と言った。
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