第4章・操られるがままに

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「・・・それって・・・・・・どういう…」 千代『………』 ――――― ―――――――――… ……月日は、何週間か前に遡る。 陸の実家…つまり私、山西千代の家に美和子が来ていた。 陸はその時は神奈川に出ていて、この町にも、家にもいなかった。 美和子は、私に陸を跡取りになってもらうよう頼みでた。 私はもちろん断った。 だけれど、美和子はとんでもない事を言い出した。 ”跡取りにくれないのなら、それなりの手段があるわ。” ”手段とは何かしら?” ”……貴方の主人の、山西隆弘さんの処分よ” 私は口を堅く閉じた。 処分・・・。 あぁ、そうだった。 私の主人は、美和子の会社に勤めているんだ…。 主人の元々勤めていた会社は4年前、取引先会社に契約を切られ倒産。 仕事を探している時に、美和子が是非にと言ってきたのだ。 それなりの手段。 今の世の中、かなり不況だ。 もし頼みを断り、 主人のクビがきられてしまえば、次の勤務先が決まるのは難しいし なにしろ、陸もまだ学生。 主人の妻であり、陸の母親である私には、美和子のその頼みを 受け入れるほかなかった。 ―――――… ――――――― 「……美和子おばさん…」 美和子『……何かしら?』 「………まだ頭の中が整理できません…。ですので、申し訳ありませんが今日のところは…」 美和子『いいわ。…来週、返事を聞きに来るわ。』 そう言うと美和子おばさんはソファーから立ち上がり、荷物を持ち帰る支度をしだす。 そして、美和子おばさんは部屋を出る前にこう言ってきた。 美和子『陸くん…、ごめんなさいね。立派な大人が、こんな汚い手を使って…』 その台詞に、俺は無表情のまま返す。 「立派な大人なら、汚い手は使いませんよ。美和子おばさんは、素晴らしい大人であったとしても、決して立派な大人じゃありません。…俺は、そう思います。」 美和子『………そうね。』 美和子おばさんは悲しげに軽く微笑んで、部屋を出た。 ・
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