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美和子おばさんが言うに、今日は縁談ではないらしい。
あちら側の社長さんと、社長令嬢と少し挨拶をする程度だそうだ。
だが緊張する。
なにしろ相手が俺でも知っている有名な会社の社長と社長令嬢なのだ。
緊張するなという方が、無理な話である。
そして車に乗ること30分…俺は、あることを考えていた。
俺は、何のために地元から離れ、神奈川に来たのか。
それは進学校に進み、まじめに勉強したかったからという理由があったはず。
でも結局は、現実から逃げたかっただけなのか?
よくわからない。
俺は結局、何がしたい。
何が目的で、何をどう思ってる?
わからない。
何故俺は今、こんなことをしているのかさえも。
俺が今していることが、
運命に身を任せるということか?
いや、違う。これは単なる現実逃避…だ。
俺は頭を窓にゴツっともたれ、小さくため息をついた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ちょうどその頃。
岡本株式会社の社長と娘は会社につき高級車から出てきたところだ。
会社の前では、社長の秘書が待っていた。
秘書『お待ちしてました、社長。』
運転手が、令嬢と社長の乗るドアを開け、
令嬢が出てきた。
彼女はシンプルなドレスに身をつつみ、きっと…
いや、誰もが振り向くような美しさをはなっていた。
けれど彼女の表情は、とてもいいものとは言えない。
そして続いて社長が車が降りた時だった。
>>>ドサッ
令嬢『!?』
秘書『?!?』
いきなり社長が胸を抑えながら倒れたのだ。
秘書『……社長?社長っ!しっかりして下さい!!社長!』
秘書は慌てて倒れ込む社長に駆け寄る。
令嬢はどこかに電話をしているようだ。
秘書『社長!!しっかりして下さいっ!社長――――――!!』
騒ぎに気づき周囲の人がざわめく中、秘書の、社長を呼ぶ声だけが
そこに残った。
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