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Side~葵~
私が大樹の家を訪れたころには、大樹はいなかった。
大樹の部屋には、飛び散った血痕と
赤い、血がねとりと着く包丁を握った女の子が、ベッドの上に座っていた。
女の子はただ、どこか遠くを見るように
ぼーっとしている。
そして女の子の瞳からは、一筋の涙が流れた。
葵『……あ…あのっ…』
私は思いきって彼女に声をかけてみた。
葵『………大樹……知らない?』
>>ビクッ―…
彼女は"大樹"という言葉に反応したのか、体をびくつかせた。
そして、
『…病院。病院いったよ』
病院……?
まさかこの子…
『大樹、死なせそこねちゃったよ。アハハ』
彼女は狂ったように笑いながら話す。
『死ねばよかったんだよ~そしたら、めぐとずっとずっと一緒だもの♪それなのに大樹、嫌がるのよ?あ!照れてるだけか!』
この子…本当にどうかしてる…普通じゃない……
『…てか、あんた誰?あぁ、大樹のセ・フ・レね♪残念ながら、大樹が愛してるのは私だけだから諦めなよ♪』
葵『―――っ、違うっ』
『えぇ~?』クスクスッ―…
それよりも!
私はまた彼女の手に目をやった。
そこにはさっきと変わらず包丁が握られている。
やっぱりこの子は
葵『あなた……大樹を刺したの…?』
すると彼女は満面の笑みで私の方を見て、
『うん♪刺したっ』
私は、今まで感じたことのないほどに
"憎しみ"を覚えた―…
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