・操り人形

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俺も、梨乃。 君に出会い すれ違い 別れ そしてまた、 君に出会った。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ Side~梨乃~ 梨乃『……調子はどうですか…?』 父『…。変わりはない。それより、私が仕事に戻ったら山ほどやることがある。縁談の話は少し先延ばしだ。』 嘘……… 私は父のその言葉に 少し息を吐いた。 よかった。 いずれくる縁談話だが、先延ばしとは…よかった… 梨乃『……では、私は勉強がありますので。失礼します』 私は病室のドアを閉めると、ここに来る時より軽い足どりでそこを出た。 秘書を置いて出た私は、広い通りに出ると、タクシーをつかまえ、自宅へと帰った。 これで少し、 心の準備ができるかもしれない。婚約への、心の準備が………。 でも、そう思った時だった。 なんで――…? なんで、あなたの顔が浮かぶの? ダメだって、あれほど言ったでしょう? 自分に言い聞かせたでしょう? 恋はしたら傷付くだけだって…叶わないのだから、してはいけないって… 心の準備が出来て、 そして父の決めた相手と結婚するの。 だから、ダメだって… けれど ごまかしきれない。 なぜ、 ………――何故? それは私にはわかりきったことだった。 私の……初恋だから。 普通の女の子よりも かなり遅れた、 …―――私の…初恋。 山西陸という人への、 ……―恋心。 そう、心の準備なんてしてもきっと、私の心に居続ける、想い。 簡単には、消えない。
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