・操り人形

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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ Side~梨乃~ 父が入院して一週間。 暑い暑い夏休みは幕を閉じ、学校は新学期を迎えた。 学校に着くと、一目見て"私、海に行って来たの"とわかる様な感じで 肌を真っ黒にした女子達。 夏休みの間に、新たなカップルも増え、 まだまだ成長期真っ盛りな男子は背も体格も男らしくなっていた。 私は特に何も変わった所もない。 校舎に入ると、私のクラスより何個も隣のクラスの前が騒がしかった。 …大樹の、クラスだ…。 梨乃『………?』 何かあったのかな? まあ、関係ないけど… そしてそこから目を外そうとした時だった。 その教室から、山西君が出てきた。 大樹と話していたのかな… 山西君は、夏原君(明)と話ながらこちらに歩いてくる。 山西君の声は聞き取るのにちょっとばかり耳を澄ますけれど、 夏原君は声がデカイ。 耳の良い私には、それはとてもよく聞こえた。  "……や、やっぱ何でもないや。わりぃな明。"  "そ?てか野島の奴、バスケどうすんだろーな"  "……さあね…"  "…でも、もう歩けねーんじゃバスケできないわなぁー…" もう、歩けない? 何の事? そういえば、父の見舞いの時も葵と看護婦さんの会話で出てきた、 "刺された" って何? 繋がりがあるの? まったくわからない。 そう、私が廊下に立ちっぱなしで考え込んでいると 葵が、私の目の前に立っていた。 葵『梨乃』 梨乃『……葵……』 私は思わず、少し身を引いた。 怖かった。 "梨乃"と呼んだ、葵の表情が。 憎しみに、覆われた表情だった。 悲しくなった…。 いつもは優しく見ていてくれた瞳は、今はもう、憎いモノを見る瞳に変わってしまっていたのだから。 ・
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