・操り人形

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葵『梨乃のせいだよ』 え………? 梨乃『…な…にが?』 私は怒りに満ちた顔で詰め寄ってくる葵から目を反らし少し後退りした。 けど、葵の右手がそれを止めた。 ―ガシッ―― 梨乃『――っ…』 葵『……梨乃の…』 葵『…梨乃のせいなんだよっ!!全部全部っ梨乃のせいなんだよっ!!』 梨乃『――――…え…?』 私のせい? 全部? 全部って…何? 葵『梨乃が大樹を傷付けたからっ大樹の気持ちを踏みにじる様な事したからっ!!…だから…梨乃が悪い…全てっ梨乃が悪いっ!!』 周りは騒がしく、教室から何事かと見にくる同級生達。 怒鳴り散らす葵。 訳のわからぬ私は ただ、黙って葵の言葉を聞く。 葵『梨乃が大樹を傷付けなければ、こんな事にはならなかったんだよ!』 こんな事って…なに? まったく話がみえないよ… …葵…… 葵『…―っズッ―…大樹はっ、もう歩けなくなるかもしれないんだよっ!!』 梨乃『……え……?』 さっき、山西君達がしていた会話…本当だったの?大樹の事だったの? でも、何で? 何で歩けないの…? 葵『…梨乃は私達を傷付けるだけなんだ!私と大樹を裏切って、次は誰を裏切るの?!』  "次は誰を裏切るの?" 葵『梨乃なんか、大嫌い。最低最悪』 葵の瞳からは、たくさんの涙が溢れ出ていた。 私は、何が何だか まだ、真実がわからずにいた。いや、何となくはきっとわかっている。 けれど、頭が 認めたくないのだ。 私も、気付いたら涙を流していた。 まさか、親友だった子に こんな事を言われるなんて。 詳しい事はよくわからないけど、まさか自分のせいで大樹が歩けなくなるかもしれないなんて。 まだ高校1年生で 縛り付けられる日常を抱えてる私に、その事実はとても重過ぎた。 「おい、沖田。」 ……山西君… 「…言い過ぎだ」 葵『…っ!そんな風に梨乃なんかを庇ってたらそのうち後悔するから!』 それだけ言い残し、葵はこの場から走り出した。 シンと静まり返るその場に チャイムだけが煩く鳴り響いた。
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