・糸、解く

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Side~陸~ 沖田がこの場から走り去り、チャイムが鳴ると、教師達がやって来た。 『こーら!お前ら何やってんだ!さっさと教室入らんか!!』 まだ20代の男の先生は、見るからに体育教師のような容姿で、声を張り上げる。 その先生の台詞に、廊下に集まっていた同級生達はそれぞれの教室に戻っていった。 ぞろぞろと教室に戻る中、俺と岡本梨乃は まだその場に突っ立てっていた。 「………岡本…」 俺は戻るに戻れなかった。 だって、岡本は声を漏らし泣いているのだ。 俺の恋心のせいか、その姿を放っておけないのかもしれない。 梨乃『ッズ…ッぅ―…』 「………沖田も…今は精神不安定なんだ。だからあんな酷いことを言ってしまった。本気では、思ってないはずだよ……………きっと…」 梨乃『………ぅッ―…ッズ』 「………岡…本…」 泣きながら、俺の語りかけにも答えようとしない岡本を見ていて どうすればいいのかわからなくなった。 廊下には、俺と岡本だけが残る。 担任はどうやら、俺達2人の存在に気付いていないようだ。 教室から先生の出席をとる声が聞こえる。 ―――…… 『えーと、欠席は山西君と岡本さんだけね?…全く新学期早々何してんだかね。えーと、今日はこれから全校集会が―… 』 ―――――――… ………俺は、どうすることも出来ない。でも、 何故そう思ったのか、 俺は、今の岡本を優しく抱きしめたいと思った。 俺の胸の中で、泣かせてやろうと思った。 包み込みたいと思った。 「……岡本…」 『……~ッ…?!』 俺はそっと、右腕を岡本の肩に回し、自分の肩に岡本の頭を押し付けた。 「…あんまり、泣きすぎるなよ…」 俺はいつも、君の 笑顔よりも泣き顔の方ばかり見ている。 だからあまり泣くな。 君には、ただ笑っていてほしいんだ。 笑顔で、いてほしい。 .
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