・糸、解く

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顔やら、何やら… ちょっと違うのは まだ美羽の方が甘えん坊だったな。 そして岡本の方が、すぐ悩みを溜め込む感じだ。 内面まではやはり、違う人物だ。似ても似つかない。 外見は、ほんとにびっくりするぐらい似ているが…。 梨乃『…会えてたら、仲良くなれたかな?』 「…ん。きっとなれたよ。いや、絶対いい関係になれたはずだよ。」 梨乃『ほんと?よかった。あ!そーいえば、今日から二者面談だよね。山西くんはやっぱ進学?』  "進学" ほんとなら此処で "あぁ、進学だよ"と 答えるところだけど… ……一気に現実に引き戻された。 「俺、身内の会社の後継ぎだから。進学は、したいけど…まだわからない。」 梨乃『会社の後継ぎ?!』 「……まぁ。うん。」 梨乃『………じゃあ、山西くん、私と一緒だね。』 一緒?何がだ? 「………?」 梨乃『私ね、親が社長やってて…近いうちに会社の為に婚約までさせられちゃうんだ……。』 「…親の決めた、相手か。俺も、婚約させられるよ。近いうちに。」 梨乃『……ほんとに?』 「………あぁ。」 梨乃『………正直ね、すんごく嫌なんだ。婚約。』 岡本は俯いて話し出した。 「……うん。」 梨乃『一生が決まる結婚だもの。…自分が好きになった人と、結婚したかった…』 自分が好きになった人と結婚したかった。 俺だって、そうだ。 梨乃『まあ婚約の話は来週先伸ばしになったんだけどね。親が、癌で倒れたから。』 癌で、倒れた? ………まさか…ね。 「…そっか。親、ずっと入院してればいいな。」 梨乃『ほんとにね。あ、皆登校してきた。雨だからって皆来るの遅いなぁ』 「………」 ―――――…… ――――… 美和子『………延期よ…。今日の予定は延期。』 「え?なんで…」 美和子『さっき、岡本社長が倒れたって。』 「…――」 ――――――… ―――…  "岡本"、社長 ただの、偶然なのだろうか いや、そうだと信じよう。 だって君は言っていた。 『自分が好きになった人と、結婚したかった…』
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