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……好きな人の、お嫁さん………か。
「……そうなんですか」
"…自分が好きになった人と、結婚したかった…"
先生『山西君も、何でもいいのよ。ほんとに何でも構わないから。そろそろきちんと将来について考えてみたら?』
「………先生…」
先生『……何?』
「………男の俺が、"好きな人と結婚して、幸せな家庭を作りたい"と言ったら、笑いますか?」
『……ううん、それは素晴らしいと思うわ。……でも、近いうちに進路相談あるけど、あなたどうするの?』
進路……
どうするっつったって…なあ……。
「………まあ、将来の夢じゃないんですけど……」
『………?』
「………社長…?」
『……………………は?』
「桜田財団の、後継ぎ?」
『………………………………はははっ……』
しばらくの沈黙がながれ、それを消すかのように授業の予鈴が鳴る。
『……。ま、進路相談までに考えとくのよ?』
「…………」
………。
流しやがったな?
この先生め。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
その晩
俺はシャーペンを片手に、作文用紙を見つめていた。
「………夢……」
夢……夢…
………
―――――…
―――…
美羽…
また入院してるのか?
"美羽ちゃん。早く、退院できるといいね"
"じゃあ私が退院できるように、陸がお医者さんになって美羽の病気治してよ"
"うん、わかった"
いつだったか。
美羽がアメリカに行く少し前の頃か。
あの頃は、美羽が全てだったからな……
お医者さんの前は……
"わたし、ケーキ屋さんになりたいの。だから陸も、一緒にやろ?"
"うん!"
いつも、特にやりたいことなどなく
美羽が、全てだったから。
将来の夢など、持ったこともなかった。
今となっては、夢などあっても無駄だしな…。
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