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でも………
あの頃は、幼いながらも、"医者になるんだ"という強い意志があった気がする。
「………医者……か。」
美羽がまだ生きていたら、俺はあのまま医者になろうとしていただろうか。
………医者。会社の
後継ぎさえなければ、俺は医者になりたい。と今、思った。
美羽のため
とかではなくて
なりたいという気持ちが少しずつ湧き出てきた。
将来の夢
山西 陸
俺はペンを持ち、作文を書き始めた。
「………」
忘れたい。忘れられない。でも、忘れたくない。
矛盾ばかりが交差する。
死んだ人のことは、忘れられないのかもしれない。
けど、何故か記憶は薄れていくのだ。
神奈川に来たての時は思い出せていた美羽や優とのできごとも、今じゃもう、うっすら少しずつ消えかかっている。
記憶は、薄れていく。
楽しかった一時も
薄れていく。
薄れてきてる物は、いつか消えてしまうのだろうか。
だとしたら、その
いつか消えるだろう
ひと時の記憶。
俺は忘れるわけ
じゃなくて
思い出にしよう。
そう、思った。
そうだ。死んだ人との記憶は、無理に忘れようとしないでいいんだ。
思い出にして、
大切に心の底にフタをしておけばいいのだ。
そして、たまに
そのフタを開けて
懐かしめばいいのだ。
美羽、それで
いいんだよな………?
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