・糸、解く

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『お待ちしておりました、桜田様。』 入口から出てきた、身なりのきちんとした30代くらいの男性は、俺と美知子おばさんを案内した。 中は広く、天井も高い。 床はピカピカ輝いていて… とにかく、キレイなのだ。 俺達は案内され、奥にあるエレベーターに乗った。 向かう場所は、最上階。 ―――チンッ― エレベーターの、到着を知らせる音がなり、扉が開いた。 最上階はとても静かで、ちょっとばかし、暗いというか…しんみりした空気が漂っていた。 案内人は大きなドアの前に立つと、ノックをした。 『松井です。桜田様をお連れいたしました。』 そう言うと、松井さん(案内人)は扉を開いた。 中に通され、俺の目に入ってきたのは これまたとても広い部屋。 部屋の左側に、テーブルとそれを囲むようにソファーがある。 そのソファーから、厳つい感じ…と言っては失礼だが、何と言うか…普通の人とはオーラが違うというか… さすがは、大手企業の社長だな。と思った。 社長『お待ちしておりましたよ』 美知子おばさんと社長は挨拶を交わす。 社長『そちらが、山西陸君ですか』 美知子おばさん『はい。』 「はじめまして。山西陸です。」 社長『私がこの会社の社長の 岡本賢治 だ。よろしく。』 ………――岡本、賢治。 ――――――――― ――――……… 美知子『相手側の会社名はね、驚くと思うけど、何とあの大手企業のOKAMOTO株式会社よ。』 「…岡…本……ですか……」 ――――… ―――――――― 「こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。」 礼をしながら、挨拶を済ました後、岡本社長は 娘を呼んで来てくれ、と 松井さんに頼んだ。 この部屋の奥にあるドアから、女の人…いや、女の子と言うべきか?とてもキレイな人が出てきた。 『はじめまして、   …――岡本梨乃です』 ただの、偶然だと 思い込もうとしていた。 けれど俺の目の前に現れた君を見てはもう、偶然とは、言えないのだ。 .
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