第5章・ジュリエット

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社長『梨乃、どうした?早く座りなさい。』 梨乃『………はい。』 岡本も俺に気付いたのだろう。目を見開いて俺を見ていた。 しばらく、よくわからない難しい話を 社長と美知子おばさんが交わす中、俺と岡本は 無言でいた。 岡本は"何で?"と言わんばかりの顔で俺に視線を送る。 けれど俺は、少し目を反らした。 社長『ところで、山西陸くん。どうですかね?私の娘は。』 「はい、私はとても美しい女性に思えます。」 社長『それはよかった。』 梨乃『…………あの…………お父さま』 社長『何だ?』 梨乃『彼は、私とは結婚したくないのではないでしょうか。なぜなら、まだ私の事を何も知りません。彼にも、思いを寄せる相手が……いるかもしれません…。』 …………え? 岡本?何でいきなり… 社長『……そう思うかね?山西陸くん。』 そう思うかね?って 言われても… 「……彼女は、とても良い女性です。結婚しても絶対に後悔はしないと思います。でも……」 梨乃『……』 「彼女が先程、"まだ私の事を何も知りません。彼にも、思いを寄せる相手が……いるかもしれません…。"というふうに言っていた事ですが…。きっと、娘さん……梨乃さんにも、想いを寄せる相手がいるのかもしれませんね。………私も、そうです。何しろ、まだ私達は学生なのですから。」 社長『………梨乃とは、どのようなご関係で?』 黙って俺の意見を聞いていた社長が、いきなりそんなことを問いかけてきた。 「………はい…?」 社長『先程の台詞に、ちょっと違和感を感じましてね。………"彼女はとても良い女性です"……まるで前から娘を知っていたかのようだ。』 ………まずい… この社長、変なとこに気づきやがって…っ 梨乃『お父さま、きっと、聞き間違いですわ。なぜなら私は、彼を今日、初めて拝見しましたので……。』 社長『………そうか。でも梨乃。お前にはここの息子さん…山西陸くんと結婚してもらう。後々の会社のためなんだよ。』 「…………」 .
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