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社長『梨乃、どうした?早く座りなさい。』
梨乃『………はい。』
岡本も俺に気付いたのだろう。目を見開いて俺を見ていた。
しばらく、よくわからない難しい話を
社長と美知子おばさんが交わす中、俺と岡本は
無言でいた。
岡本は"何で?"と言わんばかりの顔で俺に視線を送る。
けれど俺は、少し目を反らした。
社長『ところで、山西陸くん。どうですかね?私の娘は。』
「はい、私はとても美しい女性に思えます。」
社長『それはよかった。』
梨乃『…………あの…………お父さま』
社長『何だ?』
梨乃『彼は、私とは結婚したくないのではないでしょうか。なぜなら、まだ私の事を何も知りません。彼にも、思いを寄せる相手が……いるかもしれません…。』
…………え?
岡本?何でいきなり…
社長『……そう思うかね?山西陸くん。』
そう思うかね?って
言われても…
「……彼女は、とても良い女性です。結婚しても絶対に後悔はしないと思います。でも……」
梨乃『……』
「彼女が先程、"まだ私の事を何も知りません。彼にも、思いを寄せる相手が……いるかもしれません…。"というふうに言っていた事ですが…。きっと、娘さん……梨乃さんにも、想いを寄せる相手がいるのかもしれませんね。………私も、そうです。何しろ、まだ私達は学生なのですから。」
社長『………梨乃とは、どのようなご関係で?』
黙って俺の意見を聞いていた社長が、いきなりそんなことを問いかけてきた。
「………はい…?」
社長『先程の台詞に、ちょっと違和感を感じましてね。………"彼女はとても良い女性です"……まるで前から娘を知っていたかのようだ。』
………まずい…
この社長、変なとこに気づきやがって…っ
梨乃『お父さま、きっと、聞き間違いですわ。なぜなら私は、彼を今日、初めて拝見しましたので……。』
社長『………そうか。でも梨乃。お前にはここの息子さん…山西陸くんと結婚してもらう。後々の会社のためなんだよ。』
「…………」
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