第5章・ジュリエット

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Side~梨乃~ 梨乃『……でも…』 山西くんと、結婚。 それ自体は良いのだ。 なぜなら、私は山西くんの事が好きだから。 けれど、山西くんは過去に亡くした"美羽ちゃん"という子がきっとまだ好きだ。そして何より、私はこんな形で結婚なんかしたくない。 山西くんの事は好きだけれど……山西くんは 私に好意すらないと思う。 だから断りたい。でも…何でだろう……。 父の言う通りにして結婚しちゃえば、私はずっと山西くんと一緒にいれるのだ。なら、断らなくてもいいんじゃない?私は山西くんが好きなんだから…。 こんな、気持ちが 込み上げてくる。 山西くんの事を考えて、話を断りたい私と いっその事、時に身を任せて山西くんと結婚しちゃおうと考えている私が ぐるぐるぐるぐる、頭や心を掻き乱す。 私は、どうしたらいいの? ねえ山西くん。 あなたは、断ってほしい? 社長『……"でも"…なんだ?』 梨乃『……あ…あの…山西くんはきっと、私と結婚なんか望んでいません。好きの感情すらない相手と結婚なんか、したくないはずです……』 私は少し顔を下に向けた。 どうしよう………。 言ってしまった。 この台詞じゃあ、まるで私は山西くんとは絶対結婚したくないと言っているみたいだよ……。 「あの、岡本社長。」 社長『なんだ?』 「梨乃さんは、きっと結婚はしたくないと思っているはずです。」 社長『……』 「梨乃さんには、私なんんかよりもずっと素敵な男性がお似合いでしょう。僕は見合いません。それに先程梨乃さんがおっしゃっていた通り、私には想いを寄せる方がいます。」 社長『……つまり君は………』 「………」 社長『この話を、無しにしろと言いたいのかね?』 「……ええ、おっしゃる通りです。岡本社長。」 そう…か… これが、山西くんの出した結論か…。 山西くんはやはり、まだ美羽ちゃんが好きなのか…。 Side~陸~ 社長『フゥ―…。山西陸くん。一つ聞きたいことがある。』 ため息をついた社長は、俺にそう、切り出してきた。 .
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