第5章・ジュリエット

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「なんでしょう?」 社長『……娘とは、いつ、どこで知り合った?』 「………ですから、先程も言った通り…」 社長『娘の発言といい、君の発言といい…。初めて会ったようには聞こえん。……山西くん、あまり大人を見くびるなよ。』 ……ダメだ。この人に嘘は、通用しない。 「………同じこu 『前にいた中学の同級生なんです!』 「………!」 "同じ高校"と言おうとしたところで、突然岡本が話に割ってきた。 社長『……ほう。なら、なぜ秘密にする?……まあいい。それよりも、山西くん。君は大手企業の後継ぎよりも、自分の人生を歩みたいと言うのか?情を持って生きたいのか?さっきから君らは愛だの恋だのと…。私は情ばかりを持つような奴は嫌いだ。』 「そうですか。私には、愛をわからない岡本社長の方が可哀相で仕方ないですが。」 美知子『………ちょっ…陸くん?!』 社長『………』 「………彼女、娘さんはいい人ですよ。社長と違って、きちんとした感情を持っているのですから。」 岡本社長の顔がだんだんと強張っていく。 社長『山西くん、君は……立場をわきまえた上でそう言っているのかね?』 「…一応。…それと美知子おばさん。…ものすごく勝手ですが。やはり私は、会社の跡取りには、なりたくありません。ごめんなさい。」 美知子『……今更何言ってんのよ…?ふざけないで。』 「……本気です。」 社長『…フッ―………常識知らずの餓鬼か。君みたいな我が儘な子供が、この大企業の跡取りなどは無理だ。いいだろう、婚約の件はこちらからお断りさせて頂く。』 ……よし…。 これで岡本は、好きな人でない俺と結婚しなくてすんだ。 俺は軽く息をはいた。 岡本も同じく息をはくと、少し悲しげな表情をしていたのかわからないが、なんだか少し気が引いていた。 社長『それと、絶対プライベートで娘と関わるな。絶対だ。』 梨乃『そっ…そんなっ…』 松井『………桜田社長、お引き取り下さい。山西様も。お引き取り下さい。』 "絶対プライベートで娘と関わるな。絶対だ。"
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