第5章・ジュリエット

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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ Side~葵~ 今日は土曜日。 私はあの日以来ほぼ毎日大樹のリハビリに付き合っている。 葵『……いっち に、いっち に、いっち に』 大樹『――ッ―』 葵『ほら、大樹っあと少しだよ!頑張って!いっちに、いっちに、いっちに―――』 両手でパイプの支えにつかまりながら、大樹はゆっくりゆっくり 前に進んでいく。 始めのうちは真っすぐきちんと立つのさえ苦労して、右足はまったく言うことをきかないし、大変だった。 でも、大樹は めげないで頑張ったおかげで、歩く練習をするまでにいたっている。 医者も褒めているくらい、大樹はリハビリに専念している。 葵『いっちに、いっちに、いっちに、いっちに―――』 …ズルッ――――! ―――ドンッ!! 葵『―――っ!!大樹っ?!大丈夫??』 大樹は体重をかけた手をパイプサクから滑らせてしまい転倒してしまった。 ………そして私が、大樹に手を差し出したその時だった。 葵『大樹、大丈夫?!ほら、つかまって?』 ―――――パシィッ! 葵『…っ!………ぇ…?』 大樹はその私の手を振り払ったのだ。 葵『………大樹…』 大樹『……自分で、立つ』 葵『………大樹…』 こんなに集中して、苦痛を味わった顔をして、ねばる大樹。私は初めて見て……だから、私は手を貸さない。一歩下がって見守ろう。そう、思った。 大樹、頑張れ。 頑張れ 頑張れ 頑張れ    頑張れっ!!! 私が…ずっとずっと、好きだった人。 大樹。 好きだったから。 だから、頑張って。 そして私は、これからの新しい大樹に 恋をするから。 頑張って。 私の好きな人… また、笑顔でバスケをやっているところが見たいから。幸せそうな顔が見たいから。頑張って… 大樹――…… ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ・
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