第5章・ジュリエット

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Side~大樹~ あの日。 俺が葵にリハビリを 手伝ってくれと頼んだあの日から、葵は ほぼ毎日のように 俺のリハビリの手助けをしてくれている。 必死に汗だくになって リハビリをする俺のよこで、同じ様に必死になってくれている葵の姿を見ると 俺はなんて恥ずかしい事をしていたんだろう。なんてバカで最低だったんだろう、なんでこんなに心優しい葵の忠告を聞かなかったのだろう なんで こんなにも 自分を大切に思ってくれている存在に、今まで気がつかなかったんだろう なんで こんなにも こんなにも俺は 葵の事がとても大切だったって事に気がつかなかったんだろうと…… 次々と "なんで"がでてくる。 俺のしたことは とても最低で 絶対に許されないことだ。 愛のないセックス たくさんの女子の 気持ちを踏みにじり 葵も。 なのに葵はそれでもまだ 俺に笑顔をむける。 その笑顔を見るたび俺は 心が痛む。 ああ、俺はなんて 情けない奴なんだ、と。 なんて最低な奴 なんだ、と。 葵に笑顔を作らせて 励ましてもらって リハビリまで 手伝ってもらって ああ、俺は なんて贅沢なんだ。 あんな最低な事をしてきた俺が、こんな贅沢していいのか こんな贅沢を 葵に惹かれていく 贅沢を――……… 早く、気づきたかったよ。 この、温かい気持ちに。
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