『終章・下された罰は・・・』Ⅰ

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 帳場をでて、しばらく行くと、ついさっきまで膨大な証拠品の整理をしていた道場の入り口を通過する。  今は綺麗に片付けられ、警務課が段取りした布団が延べられ、捜査一課の連中が休めるようにセッティングされているはずだった。   「おい!駒井!ちょっと面かせや」  聞き覚えのある野太い声、振り向くとドアの縁に寄りかかり、腕を組んで駒井を睨んでいたのは新川、道場の中からは同じような悪意に満ちた目を持った、彼の部下達が潜むように立っている。 「何か御用ですか?休憩してよいと上司からの許可が出ましたんで、すこし休みに行くところですが」  わざとその様な突き放した物言いをしたのが感に触ったのか、ラガーマン体系の刑事が飛び出してきて、彼女の胸倉を掴んだ。 「スカした物言いしやがってこのアマぁ!」  そのまま強引に道場に引きずり込み、腕を取り、脚を払ってたたみに投げつけた。  甲高く畳表を叩く音、受身を決め一回転すると、勢いを利用してそのまま立ち上がる。  男共は一瞬あっけにとられたが、再びラガーマン体系が組み付いてくる。  体臭と口臭が酷くにおい、体温が不快に伝わる。それがよいよ耐え切れなくなった瞬間、駒井は深く腰を入れ、腕を引き、背中に彼を乗せると反動をつけて前面に放り投げた。  鈍い音が道場を揺らし、うめき声がラガーマンからもれた。   「中々やるやるやないか、ええ?柔道の稽古や言うて、シメたろう思うたけど、一筋縄ではいかんなぁ」  そして、新川が顎をしゃくると、別の刑事が上着を脱ぎ捨て駒井に迫る。   「太田垣は日拳(日本拳法)の段持ちや、大人しぃボコボコにされろ」  はやし立てるように若槻、しかし当の本人は新川の陰に隠れて出てこない。  小柄だが筋肉質の太田垣は、跳ねるようにダッキングを繰り返し、まるでおちょくるように駒井との間合いを詰めてくる。  新川が吼えた。 「この腐れアマぁが、俺のヤマにケチ付けやがって!なにが自殺じゃ、アホぬかせ!俺が締め上げ取ったら、最低でも保護責任者遺棄致死位には出来たものを、刑事いうもんの厳しさ、身体で教えたる!!」
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