悲しみの中で

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竜さんとあゆさんは彼のこの言葉を待っていたかのように、一度頷いた。 「……何故か?って聞かれたらミホの為って俺は思ってる」 私の為…… 「その考えがどれだけ安易かってことも分かってるつもりだ。正直言って俺には西野が不可欠だよ。でも……だからこそ別れを選んだんだ」 キョウさんは一間置いて続きを話す。 「俺が西野と恋人どうしのままここを去ったら、俺は西野が恋しくなって……抱きしめたくなって……おかしくなっちまう」 「だから別れたってか」 「結局は自分の為さ。西野の事なんて考えちゃいないさ。あんだけ酷いこと言って結局は自分の為だよ。……ハハハ……どうかしてる!俺……どうか……してる……よ」 ここからだと顔は見えないが、後半部分の言葉が掠れていることから彼が泣いている事が分かった。 「うあぁぁぁぁぁあ!!」 そして彼は声をあげて泣き始めた。 私より……キョウさんの方がつらい思いをしていることが今、分かった。 でも……いやだからこそ、竜さんたちに伝えて欲しかった言葉が適しているのかなと思う。
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