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竜さんの言葉が私の胸にも届く。気づかぬ内に流れていた涙。
「俺に……もう一度、アイツを愛せ……てか?」
「俺たちとしては、それを望んでいるけどね」
三人の間に沈黙が流れる。
竜さんもあゆさんも……そして私も、キョウさんの肯定の一言を待ち望んでいる。
「そうだな……」
「キョウ……!」
「キョウ君!」
二人の顔に笑顔、彼の顔には作り笑顔。
「良い話の恋愛ストーリーだとしたら、ここで主人公は友人の言葉に心をうたれ、ヒロインのもとに行くんだろうな」
私たち三人は話についていけてない、なんとなくそう思った。
「残念ながら、俺はそこまで出来た主人公じゃねーんだ。例え今お前らになんて思われようと関係ないし、俺がどうしようと俺の勝手なんだよ」
ほら、彼の考えなんて想像出来てなかった。彼が何を背負ってるかなんて分かっちゃいなかった。
「もう帰れよ。どうせ会う事なんてもうねぇから。俺のことなんか忘れておまえ……」
「いい加減にしろよ……」
キョウさんの一言は私以外の二人を怒らせるのに時間がかからなかった。
普段穏やかな表情の竜さんがあそこまで怒りを表面にだしているのだから。
「…………放せよ。もうこれ以上俺に何も言わせないでくれよ……」
私はただ聞いて涙を流すだけ。何も干渉してはいけない。
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