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「…………」
竜さんとあゆさんが黙り、沈黙の空気になる。
……そんな中、先に口を開いたのはキョウさんだった。
「……俺だってお前等の望むようになりたいよ。でも、そんな都合よく事は運べないんだよ……。分かってくれ……」
キョウさんは竜さんを振りほどき
「悪いな。どうやら俺には夢を見る時間さえ無いみたいだ……。じゃあな……」
そう言って私の視界から消える。屋上を出ようとしているのが分かる。
「あゆ、竜。……ごめん」
彼は最後にそれを言い、屋上の扉が閉まる音がした。
「キョウ!待って…………」
彼は竜さんの言葉を聞く筈もなく、私たちの前から姿を消した。
「こんなのが最後かよ……。それにミホちゃんにはなんて言えばいいんだよ……」
「……残念だけど、その必要は無いわ」
あゆさんは何かに気がついたように、竜さんに言葉をかける。
「ミホちゃん……全部聞いちゃってたでしょ?もう出てきて良いよ……」
……やっぱりあゆさんには気づかれていたようでした。さっきからチラチラとこっちを見ていたので……。
「……嘘、だろ?」
「…………ぐすっ」
私は溢れる涙を止めようとはせず、二人の前に姿を現した。
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