2章 サラ

2/4
121人が本棚に入れています
本棚に追加
/217ページ
市場からだいぶ離れた場所まで走ると、キアはルリの腕から手を離した。 キアは空いた両手で膝につき、乱れた呼吸を整える。 その後ろでは、ルリも同じように乱れた呼吸を整えつつ、片方の手で扇のようにあおいでいた。 「うわぁー。結構走ったから暑ちぃなぁ」 服の合わせ目を摘み、パタパタとあおいで服の中に空気を入れるキアに、ルリは後ろからギロリと睨んだ。 「その原因をつくったのはあんたでしょうがぁー!!」 「はあ?俺から仕掛けた喧嘩じゃないぞ」 「だからって! あそこまで派手にやる程でもないでしょう!!」 「あれでも抑えてやったんだ。逆に感謝してほしいね」 「あれが!?思いっきり店破壊してるじゃない!」 「あんなの、店に体当たりする泥棒が悪い!よって俺のせいではない!!」 「自分勝手もいいところね!!」 頭上で主人たちが道の真ん中で、しかも大声で騒いでいることに、マリーナはまるで人間が眉尻を下げて困っているような表情を浮かばせ「きゅう~~」と、か細く鳴いた。 無論、マリーナの泣き声には2人とも聞いちゃいない。 それどころか、この辺りは市場から離れているため人通りは少ないが、それでもたまたま通りかかる人に注目されていた。全然気が付いていないのだ。 仕方なしに、マリーナはまだ喧嘩する主人たちに知らせるため、服を口にくわえて注意を促そうとした時だった。 「おやおや、道端で喧嘩とは……………。 サンティエーラ様がお悲しみになられますよ」
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!