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突然現れた声に、キアとルリは同時にバッ、と振り向いた。
そのさきには、穏やかな笑みを浮かべた女がいた。
コイフによって髪は隠されて見えないが、その瞳は、まるで海のような穏やかな笑みに相応しい青色の瞳をしていた。
両者の間に、沈黙が流れる。
それでも尚、女はその穏やかな笑みを崩すことは無い。
ふと、先に動いたのはキアたちだった。
一歩、二歩と下がり、まるで「何なんだコイツは…」とでも言いたげな顔をして女を見つめる。
しかし、女の笑みを崩ずれない。
「…何なんだ、コイツは」
「って!それは思っていても口に出すんじゃない!」
思わず突っ込みを入れてしまったルリ。
つーか、本当に思っていたのか……。
軽くルリも失礼な発言をしながらも、それでも女の笑みが崩れることはない。
いや、内心凄く怒っているのかもしれない。
「まあ、それは。紹介が遅れましたわね。私、サラと申します。この町のサンティエーラ教会で、修道女をやっておりますわ」
「修道女?」
「はい。サンティエーラ教会はこのグローリア大陸中に建てられておりますが、中でもこのヴェノムは大陸一の美しさを誇っておりますのよ。ぜひ、これからの旅の安泰にお祈りを捧げはいかがでしょうか?」
笑みを絶やさずに説明するサラに、ルリは興味深そうに話を聞いていた。
と、キアが一瞬険しい表情を浮かべた。
だがその一瞬でも、ルリは見逃さなかった。
「……どうかした?」
「……お前、何者だ?」
警戒したように、キアは低い声色で聞く。
だがそれは、聞くというより尋問のように感じる。
その警戒はマリーナも同じで、ルリの胸から肩まで移動すると、低く唸り警戒の態勢になる。
突然のことにルリは動揺していたが、尋ねられた本人であるサラはまるで動揺なんかしておらず、その冷静さは異常なまでだ。
「……ただのしがない、修道女でございますが?」
「嘘こけ。そのしがない修道女が、何故俺らのことを旅人だと分かる。それに、お前は決定的なミスを犯している……」
キアは口角を吊り上げ、サラの胸を指差した。
「サンティエーラ教の修道女は皆、涙を象った石のペンダントをさげてるんだよ」
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