3章 返り討ち

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彼は迷わずその場から逃げたした。 風が駆け抜ける。 もう足音など気にしていられなかった。 おかしなことに、見つかったというのに追手の者が1人もこない。 だがそんなことも気にしていられないほどまでに、彼は動揺をしていた。 潜入する時よりも速く走り抜ける。 速く、速く――――。 このまま行けば何も問題なしに帰れただろう。 だが、彼は止まった。 短剣を右手に構え、その身に仕込んだ数々の暗器をいつでも出せるよう左手を空ける。 奴が現れるのはそう時間がかからなかった。 それは上から落ちてゆき、彼の前を立ちはだかった。 ドシイィィィイイィィン 砂埃が舞い、その巨大な音が洞窟中に響き渡る。 彼は、ここに来て初めて冷や汗が背筋を走ったのを感じた。 そんな彼の心情も露知らず、それは闇に浮かぶ巨大な目玉で彼を見下ろしていた。
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