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「しつこいなあ、もう」
ルリはなるべく周りに被害をかけないよう、裏路地を走りまわっていた。
その目の先には屋根を駆け渡る仮面の者。
(キアの方は大丈夫かなぁ)
それから、何でこんなことになってしまったのだろうかと、ルリは小さく溜め息を吐いた。
まだ足のスピードで本気は出していない。
本気を出せばあんな図体だけデカイような奴になんか簡単にまけることが出来る。
が、それが出来ない理由は肩にいるマリーナにあった。
今でも必死にしがみついているマリーナに、もしこれ以上のスピードを出したら降り払ってしまうかもしれない。
そうそうに決着をつけた方がいいだろう。
ルリは辺りを見回しながら、それなりによさそうな物を探す。
と、いつの間にかルリは裏路地でも狭い道に入っているのに気が付いた。
しかも、辺りは薄暗く、上からでは下の様子は見づらいだろう。
まあ、下からでも見づらいのだか。
ルリはその場に急ブレーキをかけるように止まると、平らな壁を見上げ、
「……ほほう」
ニヤリと笑った。
その笑顔はまるで、悪戯を思い付いたというような意地の悪い笑みだ。
「みゃぁ~~」
マリーナが一声鳴いた。
不安がっているのだろう。
ルリはマリーナの首元を撫でてやり宥める。
そうすると、少し落ち着いたのか甘えるように撫でる手にすり寄った。
「大丈夫だよ。ただ、後少しの辛抱だからね」
ルリがそう言うと、マリーナがまるで「分かった」とでも言っているようにまた鳴いた。
それから、腰に吊してある剣の柄を手にし壁を睨む。
仮面の者が来るその時まで、ルリはそのタイミングを数えて準備を整えていた。
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