3章 返り討ち

5/14
前へ
/217ページ
次へ
(一体何をするつもりなんだ……?) 仮面の者は大きな差を開いて走っていた少女を見つけた。 が、その少女はその場で止まってしまう。 その理解不能な少女の行動に仮面の者は困惑していたが、何やらともあれ、それは好都合な行動でしかない。 少女の所まで走り、それから下に下りて道を閉ざせばいい。 少女が向っていた場所の先は、ただの行き止まりなのだから。 そう思うと、さらに足を速めスピードを上げていく。 少女と仮面の者の間が、30mになった。 それでも、少女はその場から動く様子はない。 少女と仮面の者の間が、20mになった。 だが、少女は一向に動かない。 少女と仮面の者の間が、10mになった。 しかし、少女は動かない。 後この一歩を踏み出せば、仮面の者は下に下りて少女の前を立ち塞ぐことが出来るだろう。 そう、後一歩だ。 自然と仮面の下に笑みが浮かぶ。 幼い女と戦うのはあまり好ましくないし、個人的にはもう1人の男の方と戦ってみたかったが、それでも戦闘は戦闘だ。 それに、あの一発をかわしたのだからあの少女とて戦えないわけがない。 久々の戦闘に、仮面の者の腕が鳴る。 少しは楽しませてくれることを期待しつつ、仮面の者はその一歩を踏み出そうとした。 が――――――――――。 少女がその場から掻き消えた。 あまりのことに仮面の者は動揺を隠せず、その場に止まってしまった。 それがいけなかった。 風が仮面の者の下から生じる。 いや、風なんて生易しいものではない。 それは、烈風だった。 「……ッ!!」 咄嗟に腕で庇うが、それでも烈風は体全体に襲いかかってくる。 後ろへと飛び、烈風から距離をとった。 片膝をつき、肩で大きく呼吸をし烈風で切ってしまった左腕を押さえ込む。 が、そんなに戦闘に支障をきたすような傷でもないので、仮面の者は内心ほっ、とした。 そして、眼光を鋭く光らせ烈風を操る者をその目で睨み付けた。 そこには、スラリとした細身の剣を片手に悠然と立っている少女、ルリの姿があった。
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!

121人が本棚に入れています
本棚に追加