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(一体何をするつもりなんだ……?)
仮面の者は大きな差を開いて走っていた少女を見つけた。
が、その少女はその場で止まってしまう。
その理解不能な少女の行動に仮面の者は困惑していたが、何やらともあれ、それは好都合な行動でしかない。
少女の所まで走り、それから下に下りて道を閉ざせばいい。
少女が向っていた場所の先は、ただの行き止まりなのだから。
そう思うと、さらに足を速めスピードを上げていく。
少女と仮面の者の間が、30mになった。
それでも、少女はその場から動く様子はない。
少女と仮面の者の間が、20mになった。
だが、少女は一向に動かない。
少女と仮面の者の間が、10mになった。
しかし、少女は動かない。
後この一歩を踏み出せば、仮面の者は下に下りて少女の前を立ち塞ぐことが出来るだろう。
そう、後一歩だ。
自然と仮面の下に笑みが浮かぶ。
幼い女と戦うのはあまり好ましくないし、個人的にはもう1人の男の方と戦ってみたかったが、それでも戦闘は戦闘だ。
それに、あの一発をかわしたのだからあの少女とて戦えないわけがない。
久々の戦闘に、仮面の者の腕が鳴る。
少しは楽しませてくれることを期待しつつ、仮面の者はその一歩を踏み出そうとした。
が――――――――――。
少女がその場から掻き消えた。
あまりのことに仮面の者は動揺を隠せず、その場に止まってしまった。
それがいけなかった。
風が仮面の者の下から生じる。
いや、風なんて生易しいものではない。
それは、烈風だった。
「……ッ!!」
咄嗟に腕で庇うが、それでも烈風は体全体に襲いかかってくる。
後ろへと飛び、烈風から距離をとった。
片膝をつき、肩で大きく呼吸をし烈風で切ってしまった左腕を押さえ込む。
が、そんなに戦闘に支障をきたすような傷でもないので、仮面の者は内心ほっ、とした。
そして、眼光を鋭く光らせ烈風を操る者をその目で睨み付けた。
そこには、スラリとした細身の剣を片手に悠然と立っている少女、ルリの姿があった。
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