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光の大陸〈グローリア〉
六つの大陸の中で最も平和であり、「アックワ・サンティエーラ」と呼ばれる人間を聖女として崇め敬う「サンティエーラ教」と、呼ばれている宗教が普及されている大陸である。
そんな、グローリア大陸の南にある港町〈ヴェノム〉に、まるでゴンドラのような木造造りの船が一隻、港にとまった。
この辺では見掛けない船に、周りにいた人々はその船を物珍しそうに見つめる。
その船は紅色一色に塗られ、帆は見え方によって白になったり、薄い青になったり、銀色に変色するなど変わった色をしていた。
そして何より、この船の変わったところは、碇がないのと、オールが魚の鱗のような柄で何本も吊ってあったところだろう。
派手というべきか、それともキテレツなのか、どっちにしろそれが余計にこの船の異色さをきわだたせていた。
すると、船に乗っていた者が軽やかに船場に着地した。
女だ。
アオみかかった黒髪を後ろでお団子状に結わえ、淡い青色のリボンで結んでいる。
瞳は澄んだ空色の瞳。
色白で、小柄な体型にも関わらずその腰には、女には不釣り合いな剣を吊っていた。
その剣の鞘は、変わったデザインがほどこされていた。
女がた場所にまた1人着地した。
今度は男だ。
真っ直ぐに伸びた銀色の短髪で、左の横髪の一房にだけ凝ったデザインの筒を填めている。
黒の混じった赤色の瞳は切れ長で、その顔はクールな印象を与える。
右目の目尻から鎖骨までに、瞳と同じ色の刺青が彫られていた。
男の腰にも、女のと比べて一回り大きい剣が吊られている。
やはりこの剣もまた、変わったデザインが彫られていた。
人々が見守る中、女がめいいっぱい腕を空に広げ、伸び始めた。
「くうぅー!やっと着いたぁ。全く、船旅も楽じゃないね」
「当たり前だろうが」
隣りにいた男が呆れたように言うと、女は伸びをやめた。
それから、男の方に振り向くと拗ねたように唇を尖らせて言う。
「なんでキアは平気そうなのよ」
「俺とルリでは体力も力も違うだろうが」
キアと呼ばれた男はせせら笑うと、さっさと先に行ってしまった。
「……これでも力はあるつもりなのになあ」
ムッとした表情を浮かばせていたが、キアを見失う前にルリは後を追いかけた。
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