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屋上にたどりついて空を見上げた。やっぱり、青い。あの空のどこかに、遊はいるのかもしれない。
「好きですっ…!」
空に向かって叫んだ。
「遊が好きっ…!」
ずっと言ってなかった。ずっと言えなかった。言えずに去って行った。ずっと言いたかった言葉だった。
「だいすきっ……!」
叫びは、鳴咽に変わった。喉がつまってそれ以上は言えなかった。
封筒から、たくさんの遊の写真がこぼれた。みんな笑った顔だった。あの日に触って感じた通り、遊は遊だった。ずるい。忘れられない魔法をかけられた。
「…っ…好きっ…ですっ…」
誰もいない屋上で、小さく何度もつぶやいた。顔をしわくちゃに歪ませながら、涙があふれてあふれて、流れた。
涙の一粒が、遊からの手紙の上に落ちて、インクがにじんだ。黒のインクは水に溶けては、黒にはならず、深い紺色になった。きれいな色だった。
大きなテディベアを抱きしめて、ぎゅうぎゅうに抱きしめて、私は号泣した。
「ゆとりぃ…」
名前を呼んだ。
「遊ーっ…!!」
届くはずのない声を空に向かってのばした。
「好き…大好きっ…!!」
届くはずのない想いを雲の上にのばした。
---ザァッ…
優しい、風がふいた。
その風には色がついていた。
遊と同じ色だった。
。
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