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その日から毎日、遊は私のところに遊びにくるようになった。そして色んな話をした。遊は私より二つも年上で、『学校に行っていれば』高1の人だ。でも遊は中2の時から、病院の外へ出た事がないらしい。理由は教えてくれないけれど…
彼の話は私にとって魔法だった。話をしていくうちに、私の中で色が戻り始めていたのが分かった。
「ななみ。幸せって、人それぞれ違うんだよ。まわりの人間が、どれだけ自分を指差して不幸だと言っても、自分が幸せだと思えるならそれで良いんだ。」
「…遊はまわりから不幸だと言われた事があるの?」
「・・・・」
いつも。いつもそうだった。遊は私に、自分の事をあまり深くは教えてくれなかった。私が何か遊の事を聞くと、いつも黙って笑ったような気配がするだけだった。
「幸せは、誰かの価値観や判断で決めるもんじゃない。決めるのは、自分自身なんだ。」
楽しい話もできるのに、なぜか遊は毎日決まって、幸せについて話をする。私はただ聞く事しかできなかった。今なら、それが遊のせめてもの罪滅ぼしだったんだと、分かっているのだけれど…
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