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婆ちゃんはオレが出来ないことを全てやってくれた。
美優のオムツ交換とか、ご飯を作ってくれた。
父さんは何度も婆ちゃんに頭を下げていた。
これもまた男の甲斐性なのだろう。
因みにそれ以外の美優の世話をオレが任されていた。
たまの登校日は小学校はいかないと行けないから、それ以外の時間は大半が美優の世話に費やされる。
友達に誘われることもあったが、事情を説明してたまにオレの家にきてもらって美優の世話をしていた。
美優はオレのクラスのちょっとしたアイドルだった。
成長した美優は生まれた頃より可愛さが増していた。
「美優ちゃーん。あーそーぼー」
ある日、友達の竹山大輝(たけやまだいき)が遊びに来ていた。
母さんがいなくなって四日。
予定よりかなり遅くまだ少し先らしい。
「いやん」
「何でオレなんだよ…」
美優はオレに抱きつき動かない。
「なんで~浩介ばっかで俺寂しい」
大輝はひざまついた。
「オレに聞かれてもな…」
ちなみにこのあともずっと気を引こうとしていた大輝だったが全くダメだった。
ご愁傷様。
その日大輝が帰った後のことだ。
――――プルルルルル
「はい」
婆ちゃんが用事してたからオレが電話をとった。
「はい。寺村ですが」
『もしもし○○病院ですがっ!』
せっぱ詰まっている女の人の声だった。
「婆ちゃん~病院から~」
オレはすぐに叫んだ。
「はいはい。変わりますね」
婆ちゃんはパタパタ歩いてきた。
「はい。変わりました――はい。―――わかりました。病院へ向かいます」
――ガチャ
「母さんどうしたの?」
何となくわかるのに聞いてしまうのはなんでだろうね…。
「生まれるのよ。浩ちゃんの弟たちが生まれるの。だから、病院にいきましょ」
婆ちゃんはニコニコしながら答えてくれた。
「そっか。病院にいかないとだめだな…美優どうしよう…」
「大丈夫よ。浩ちゃんの言うことは聞くのでしょう」
婆ちゃんのいっていることは正しかった。
この頃、美優は下手したら母さんにまでたてつくほどワガママでした。
しかし、オレが叱るとまだ素直に聞いてくれるわけで…。
今は聞きませんが…。
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