10917人が本棚に入れています
本棚に追加
婆ちゃんが呼んでくれたタクシーで病院までいく。
父さんは仕事次第で直ぐ来るらしい。
父さんは大切だと思ったらわりと早退する人です。
「婆ちゃん。母さん大丈夫だよね?」
分娩室の前でベンチにすわるオレと婆ちゃん。
「大丈夫よ。浩ちゃんのお母さんだもの」
婆ちゃんは笑顔で答えた。
中からは母さんの必死な声と看護婦さんの応援が聞こえてくる。
理屈なんていらないのだ。
ただ安心できる言葉がほしいだけ。
美優はまだよくわかっていないため、廊下で座り込むと持ってきていたオモチャで遊んでいた。
「美優~あんまり真ん中で遊ぶなよ…」
美優にはあまり関係ない。
スペースがあればそこは美優のフィールドなのである。
「にぃちゃう。ん!」
オレは人形を手渡された。
オレはどうしたらいいんだ…。
「あしょぶ」
「美優って、すげーよ」
母さんの必死な声が聞こえようと美優は自分のペースを崩したりはしない。
「にぃちゃう?」
不安そうにオレを見てきた。
美優は美優なりにオレに気遣ってくれているみたいに見える。
とにかく、無意味な不安でいっぱいなオレは二歳の美優に支えられている。
そんな気がしたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!