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美優と遊んでいると直ぐに父さんが現れた。
「どうですか?」
「少し長いけど、もう少しじゃないかしら?」
父さんは緑色の服、ボワボワした帽子をかぶっていた。
「中に行きます。浩介と美優を宜しくお願いします」
父さんは頭を下げる。
「この子達は良い子よ。それよりあの娘の所に行ってあげて」
さすが婆ちゃんは経験者である。
落ち着いた顔をして笑顔で父さんを送り出した。
父さんはそのまま分娩室へ入った。
「婆ちゃん?父さんは入っていいの?」
オレは不思議だった。
「ん~大人になってからね。結婚したら旦那さんはいいのよ」
オレはなんとなく納得して美優の相手をした。
―――オギャーオギャー
父さんが入って十分後、赤ん坊の元気な大声が聞こえてきた。
「浩ちゃん産まれたわよ!」
「ん!?男?女?」
――――オギャーオギャーオギャー
するとすぐもう一つの産声がきこえてきた。
「二人目も無事ね」
「二人?」
オレは頭が弱い。
一度に二人も産めると知らなかったのだ。
「そう。双子ちゃんよ」
婆ちゃんはニコニコしながらオレの頭をなでた。
「毎年三人分のプレゼント用意しないといけないのか…」
オレは美優の誕生日に少ない小遣いからプレゼントを上げていた。
二人ふえるなら当然美優だけではなく。
今、生まれてきた弟にだって…妹…二人か?
にもあげなきゃ不公平だ。
「良いお兄ちゃんになったわね」
婆ちゃんは本当に嬉しそうに笑った。
父さんが中から出てきた。
「どうだったの?」
婆ちゃんがすかさずきく。
「母子ともに健康です。双子は女の子と男の子でした。先に生まれたのは男の子の方です」
父さんは世界で一番嬉しそうな笑顔で興奮気味に答えていた。
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