双子誕生

10/13
前へ
/818ページ
次へ
美優と遊んでいると直ぐに父さんが現れた。 「どうですか?」 「少し長いけど、もう少しじゃないかしら?」 父さんは緑色の服、ボワボワした帽子をかぶっていた。 「中に行きます。浩介と美優を宜しくお願いします」 父さんは頭を下げる。 「この子達は良い子よ。それよりあの娘の所に行ってあげて」 さすが婆ちゃんは経験者である。 落ち着いた顔をして笑顔で父さんを送り出した。 父さんはそのまま分娩室へ入った。 「婆ちゃん?父さんは入っていいの?」 オレは不思議だった。 「ん~大人になってからね。結婚したら旦那さんはいいのよ」 オレはなんとなく納得して美優の相手をした。 ―――オギャーオギャー 父さんが入って十分後、赤ん坊の元気な大声が聞こえてきた。 「浩ちゃん産まれたわよ!」 「ん!?男?女?」 ――――オギャーオギャーオギャー するとすぐもう一つの産声がきこえてきた。 「二人目も無事ね」 「二人?」 オレは頭が弱い。 一度に二人も産めると知らなかったのだ。 「そう。双子ちゃんよ」 婆ちゃんはニコニコしながらオレの頭をなでた。 「毎年三人分のプレゼント用意しないといけないのか…」 オレは美優の誕生日に少ない小遣いからプレゼントを上げていた。 二人ふえるなら当然美優だけではなく。 今、生まれてきた弟にだって…妹…二人か? にもあげなきゃ不公平だ。 「良いお兄ちゃんになったわね」 婆ちゃんは本当に嬉しそうに笑った。 父さんが中から出てきた。 「どうだったの?」 婆ちゃんがすかさずきく。 「母子ともに健康です。双子は女の子と男の子でした。先に生まれたのは男の子の方です」 父さんは世界で一番嬉しそうな笑顔で興奮気味に答えていた。
/818ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10917人が本棚に入れています
本棚に追加