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「父さん。母さん元気?」
「元気一杯で困るくらいだ」
オレは母さんが元気ならそれでいい。
そう思った。
「とうたん元気?」
美優はなぜか父さんに聞いていた。
「お~美優ちゃんは俺の心配してくれてたのか~」
父さんは美優を抱き上げようとした。
「父さん。着替えてこいよ」
父さんの手が止まる。
産まれたばかりの赤ん坊をさわったのであろう。
ビニール手袋が汚れていた。
「すまん。浩介気が利くな。着替えてくるよ」
父さんはそのまま去っていった。
まもなく母さんもあらわれた。
疲れたように見えたがそれでも嬉しそうなのは変わらなかった。
「浩介。美優ちゃんのことありがとうね」
母さんがオレにいった。
「いつもと変わんないから」
オレはつっけんどんに答える。
病室で少しの間だが産まれたばかりの双子をみた。
美優を始めてみた時より少し小さかった。
当然ではあるがそんな二人をみて、オレは美優と同じように守らなければならないと言う義務感にも似た責任感を感じた。
「母さんは少し病室にいるけど美優ちゃんのことお願いするわね」
「まかせろ」
オレはすぐ返した。
「あんたの口調、父さんににてきたわね…」
母さんは笑って答えた。
当時の自分ではよくわからないがそうらしい。
今でも信じたくはない。
母さんと双子の元気そうな顔をみた後、家へ帰った。
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