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そして、二日後その子は現れた。
何考えてんだか、オレは人間を食べ物と勘違いするアホだったんだ。
母さんは、その子を優しく抱いて、オレの知っている以上の笑顔で屈んでオレにその子を見せる。
「この子があなたの妹になる美優ちゃんよ~」
その子は安らかに眠っていた。
幼いオレでも、その子が周りの赤ん坊より遥かに可愛い事がよくわかった。
「お前に大事な話がある。しっかり聞いてほしい。とりあえずリビングへ行こうか」
俺たちはそのままソファーのあるリビングへ向かった。
「浩介。この子とお前は血が繋がっていない」
「ちがつながってないってどういうこと?」
この時のオレはアホなのでまったく分かりませんでしたね。
えぇ、アホですから。
いや、三歳になったばかりの人間に血の繋がりを説いたからって、意味なんて分からないか…。
「だけどこの子は家族だ! 今日から立派な俺たちの家族なんだ! 周りになんと言われようと家族…ぐはっ」
残念な父さんが、あまりに同じ事を連呼するので、母さんにしばかれました。
当然ちゃ、当然か、寝てる赤子の前で大声だしてんだから。
「い、痛いじゃないか母さん! くはっ」
また残念な父さんがしばかれました。
残念な父さんなので全然わかってません。
―――ゴトン
「「「…………」」」
「スヤスヤ」
赤ん坊の美優が母さんの胸元から床へころげた……。
「み、美優ちゃん!? だ、大丈夫なの!?」
「な、なにやってんだ母さんっ!」
「やばいんじゃないの!?」
でも、美優は起きなかった。
いや、正しくは爆睡してまったく起きる気配がない。
この時から美優の大物ぶりは発揮されていたのかもしれない…。
「ま、まぁ…寝てるから大丈夫じゃない?」
母さんが苦笑いしている。
い、いいのかか母さん!?
「そうだな、大丈夫だろ!」
あんたがいってもなんの説得力ないよ…。
「病院にいかなくていいの?」
幼い俺でも怪我をすれば病院に行くことぐらい知っている。
「そ、そうだな。病院いくか!?」
「そうね! 行く! 行かなきゃ!」
二人は急いで病院へオレはあまり病院が好きではなかったので留守番する事にした。
今だから思う。
只のビビりだ。
注射のイメージから今でも病院は好きになれないんだよな…。
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