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「プフッ! ハハハハハハ!」
母さんはオレのあまりに意味不明な理由を聞いて爆笑し始めた。
明らかにヘルプなオレを笑っている。
まぁ~端からみりゃ幸せ一杯な事件だが当事者のオレには大問題だ。
「母さん…。」
「プフッ! なにしてるのよ。男の子なのに小さな女の子に負けるなんてダメね。父さんに似たのかしら?」
やめてください。
オレは残念な男だけにはなりたくありません。
ただ、確かに赤ん坊に負けている三歳児も残念かもしれない…。
いや、美優の赤ん坊としての能力は既に赤ん坊の基準を遥かに越えているはずだ。
母さんは仕方なく美優の手からオレの手首を解放しようとした。
「あ、あれ?」
あまり芳しくないようだ。
作業が進まない。
「美優ちゃ~ん。お兄ちゃんと手をはなそうか~」
手首を掴んでいる美優はニッコニコしているわけで離す気配はない。
「しかたないか…少し強引だけど石鹸で何とかしましょうか。口に入れても問題ないの使ってるわけだし」
母さんは洗面所からいそいで石鹸を持ってきた。
濡れたタオルで泡立てると泡を上手く腕に塗りつけた。
「うぎゃーうん、ぎゃーん」
おかげで腕は開放されたが……美優が泣き出した。
「………。浩介、腕入れてみて…」
「なんで?」
開放された腕をお母様は入れろと言い放った。
勘弁してほしかったが仕方なく入れた。
するとまた掴んでいる。
こともあろうに美優は笑顔を取り戻した。
「「………。」」
「ゲラゲラ」
美優は笑っている。
「抜いてみて…」
オレは言われるまま抜く。
今回はヌルヌルしていたためすぐ抜ける。
「ギャー!」
また、泣き出した。
「入れて」
「また~? 保育園おくれちゃうよ…」
「いいから早く!」
なにやら楽しくなっている母さん。
仕方なくもう一度、中に入れると同じように掴んで笑顔になる。
「さぁ~仕事、仕事っと!」
「か、母さん!?」
何故か部屋を出ようとする母さん。
「どうしたの?」
「保育園…いかないの?」
当時のオレにとって、保育園は会社のようなものだと思っている節があった。
「えぇ~だって美優ちゃんが泣いちゃうじゃな~い」
そんなあからさまに面倒くさそうな顔をしないでほしいものだ…。
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